芝生の上や森の中に
以前(2014年だったかな)、鹿児島旅行に行った際、「霧島アートの森」を訪れました。山の中にある野外美術館です。もちろん建物としての美術館はあるのですが、メインは野外にある展示物。芝生の上や森の中に転がっているアートは、存在自体がミステリアスです。
こちらは「あなたこそアート」という作品です。作品が絵の額縁で、中の空洞から見えるものすべてが絵、という想定。額縁に腰掛けると、自分自身がアートになります。
「ライトシープ2012」という作品のタイトルは、聖書「最後の審判」にある「羊飼いが羊と山羊(やぎ)を分けるように、救われる人々(羊)は王の右側に置かれる」という文章に由来しています。
「アース・レッド&ブラック」という作品。2つ並んだ巨大な球は大地のエネルギーを表しています。一緒に行った(顔の丸い)後輩が間に立ったので、球が3つになりました。
2度めと3度めの直島
2度めの直島は、2010年8月。会社の同じ部署のメンバーと行ったのですが、残暑がとんでもなく、ギラギラとした太陽光に上司2人が序盤からノックアウト。早く帰ろう・・・早く帰ろう・・・と、弱気発言を繰り返す彼女たちをなだめるのがとにかくたいへんでした。
そして3度めは、2016年7月。社員旅行の自由行動で行きました。あまりアートには興味のないメンバーでしたが、行ってみようと僕が連れだしたわけです。案の定といいますか、やや天然の同僚Hさん(写真左から2人目)は地中“海”美術館だと信じて疑いません。いや、地中に埋まって建てられてるから地中美術館なんだよ。しまいには瀬戸内の海を見て、あーなんだか地中海っぽくていいですねーとか言い出す始末です。まあ、アートの楽しみ方は人それぞれだからいいんですけどね。
改めて思ったのは、3度来ても僕はモネの部屋が好きだな、ということ。一日中入り浸っていられます。マストアイテムの赤と黄色の南瓜にも触れたし、家プロジェクトもちらっと覗けました。ただ、スケジュールがかなりタイトだったこともあって、せっかくのベネッセハウスでのランチが慌ただしすぎたのだけは心残りでしたね。たぶん直島は、また訪れることになると思います。
いたるところに
「アートの島」と呼ばれるだけあって、直島にはいたるところにアートが転がっています。たとえ美術館やなんらかの建物の形式を成していなくても、“そいつら”は佇んでいる。いわゆる屋外オブジェというやつです。
たとえば遊歩道を歩いていると・・・
ポップな「猫」がいます。ニキ・ド・サンファールという人の作品です。
「像」ですね。
こちらは「会話」という作品。モチーフは蛇です。
こいつは何者? カレル・アペルの「かえると猫」という作品です。
あるいはベネッセハウスミュージアム前の道路沿いには・・・
これはジョージ・リッキーの「三枚の正方形」です。
「文化大混浴 直島のためのプロジェクト」は蔡國強の作。
そして砂浜に出てみると・・・
大竹伸朗「シップヤード・ワークス 切断された船首」
大竹伸朗「シップヤード・ワークス 船尾と穴」
さらに普通の住宅街に入っていくと・・・
ホントに昔ながらの街並みって感じですよね。
そしたら暖簾がオシャレだったり。
表札がかわいかったりするのです。
一つひとつの作品の制作意図をちゃんと理解しているわけではないけれど、とにかく見て触れることが楽しいくて、なんだか心がウキウキしちゃう。そんな場所なのです。
作品がガラッと変わるわけではないのに、またその空気を吸いたくなる。不思議な魅力を持つ直島には、このあと2度訪れることになります。
ポップな古民家再生
「家プロジェクト」は、直島の本村地区にある古民家を改修・改造し、現代美術作品に変えてしまおうという試み。ほんとに「え?なぜこんなところに?」というところで、ふいにアートが顔を出すんですよね。なんともポップな古民家再生です。
「はいしゃ」と名付けられたアートは、実際に歯科医院件住居だった建物です。廃屋のような建物ですので、最初は「廃社」という字なのかなと勝手に思い込んでいました。おそらく当時のままのトイレや少し傾いた板の間は、かなり年季が入っています。そしてなぜか室内に自由の女神がいるんです。
安藤忠雄が設計を担当し新たに建てられた建物は、「南寺」という名前。明治時代まで南寺という寺院が実在していた、まさに場所にあります。中はジェームズ・タレルの作品になるのですが、まあ「暗闇の美学」とでも呼べばいいのでしょうか、独特の世界観です。
「護王神社」は高台にあり、はあはあ言いながら石段を登っていくことになります。神社自体は江戸時代からあったそうですが、伊勢神宮などの建築様式を参考に新たな社殿がつくられました。氷にも見えるガラスの階段が特徴的です。
そのほか、角屋や石橋、きんざ、碁会所と、ぜんぶで7つの家プロジェクトが直島にはあります。
モネの部屋
直島の地中美術館にあるモネの部屋が好きです。
この部屋には5枚の「睡蓮」の絵(かなりのビッグサイズ!)が展示されています。モネは晩年、絵画とそれらを展示する空間が一体となって、そして空間それ自体が作品となるような、そんな壮大な構想を抱くようになったそうです。まっしろな空間、丸みを帯びた壁、そして天井からそそぐ自然光。この部屋がまさにそうなっているのです。
部屋に照明はなく自然光で作品を魅せています。床はモザイクタイルのようになっていて、スリッパに履き替えて入室します。
とにかくその大きさに圧倒されます(ブログではまったく伝わりませんが)。
ちなみに、地中美術館の入口部分にはモネの「睡蓮」を模した実際の池があります。このへんも芸が細かいというか、なにかと乙なんですよね〜。
絵自体は5枚なので、すぐ見終わるんじゃないの?と言われればそうなのですが、僕は一日中でも入り浸れちゃいます。それこそ許されるなら床に寝っ転がって、何も考えずにのんびりと鑑賞していたい。何度訪れてもまた来ようと思う、ホントに不思議な空間なのです。